このブログではこれから P 値を閾値として統計的に有意であるかどうかを決める検定について解説していく.しかし P < 0.05 の場合は統計的に有意でとする考え方は正しいくない あるいは 訂正すべきであるという考え方が主流になりつつある(1),(2),(3),(4),(5).
(1) Ronald L. Wasserstein & Nicole A. Lazar 2016 The ASA Statement on p-Values: Context, Process, and Purpose Ronald L. Wasserstein & Nicole A. Lazar THE AMERICAN STATISTICIAN 2016 70(2) 129 – 133
(2) 三輪哲久 2017 ASA声明 に対する大雑把なコメント 計量生物学 38(2) 163–170
(3) Daniel J. Benjamin et al. Redefne statistical signifcance 2018 Nature Human Behaviour 2 6 – 10
(4) Zachary Chuang, Janet Martin, Jordan Shapiro, Derek Nguyen1, Penelope Neocleous and Philip M. Jones 2023 British Journal of Anaesthesia, 130 (4): 412 – 420
(5) 検定と p 値 坂巻 顕太郎 2023 生物統計学の道標 研究デザインから論文報告までをより深く理解するための24 講 監修・執筆 板巻顕太郎 篠崎智大 一般社団法人 厚生労働統計協会 p68 – 81
統計的有意性検定(NHST:Null Hypothesis Significance Testing)について
文献 (1),(2),(5) については,①統計的有意検定をどう考えるか?,②エビデンスとして統計的有意検定だけでなく他のエビデンスが不可欠であること についての検討である.(3) および (4) は P < 0.005 にしたほうがよいことについて考察している.
個人的には,(1) は極論すぎており,(2) および (5) が考察しているように,P < 0.05 だけがエビデンスとして重要でなく,他のエビデンスと考え併せて考察し結論づけることに賛成している.
このブログでは,科学的な考察をするには,エビデンスとして統計的有意検定だけでなく他のエビデンスが不可欠であることをコンセプトとして統計的有意検定の解説をしていく.
まとめ
(1) 統計的有意検定は唯一のエビデンスであるような考え方がサイエンス分野で浸透しているが,これは科学や技術の進歩と発展に悪い影響を与えている.
(2) 科学的な考察をするには,エビデンスとして統計的有意検定だけでなく他のエビデンスが不可欠である.